協同組合についてわかりやすく説明します

 

協同組合とは、同じ目的を持った個人中小企業があつまってお互いに手をつなぎ助け合ったり高め合ったりするための組織です。簡単にいうと学校の部活動やサークル活動を「仕事」にしたような感じですね。

それではそもそもなぜ協同組合ができたのでしょうか?近代における協同組合の歴史は19世紀のイギリスにさかのぼります。1760年頃からイギリスで勃興した産業革命は、生産力を飛躍的に拡大させたものの、工場で働く労働者は低賃金・長時間労働を強いられ、また常に失業の不安にさらされていました。また、悪徳商人により、不良品を高く売りつけられるなど惨めな生活をおくっていました。このような生活に耐えかねた人々の間でお互いに手をつなぎ助け合っていこうという協同組合運動が生まれたのでした。

1844年12月21日、イギリスの工業都市マンチェスター(現在ではサッカーのクラブチーム名でも有名ですね)の北東にあるロッジデールという町で、28人の先駆者が、自らの手で良い社会を生み出そうと「ロッジデール先駆者組合」を開設し、ここに協同組合の先駆的な役割を果たす組織が生まれました。彼らは1年がかりで1ポンドを積み立て、倉庫の1階に最初の店舗を開きました。ちなみにこの時売り場に並んだのは、小麦粉・バター・オートミール・砂糖の4品のみでした。

ロッジデール組合の運営は、持続的・恒久的な手本として、後世の組合運営に大きな影響を与えました。運営の原則をまとめたものをロッジデール原則と呼び、その精神は今日の世界の協同組合原則にも受け継がれています。

ロッジデール先駆者組合の特徴

1.購買高による剰余金の分配(剰余はそれを生み出した者に与えられるべきとの考えによる) 

2.品質の維持(当時の商品は異物の混入や重量のごまかしが多かった)

3.市価での取引(適正な利益を得て剰余金を分配するため、また安売り競争で商品の品質を犠牲にするのを防ぐ  ため)

4.現金での販売制度(当時の購買は掛売りで行われていたことから、労働者は常に多額の借金を抱えていたことから、負債から開放されるため) 

5.組合管理での組合員の平等。投票は一人一票で委任不可の原則(組合員一人一人に民主的投票を与えるため)

6.組合の政治的・宗教的な中立の原則(組合員の信仰・思想の自由から生まれた)

7.教育の推進(組合員の知的・社会的向上を目指す)

 

協同組合は株式会社とどう違うのか

ここで組合は株式会社とどのように違うのかを見てみましょう。まず2つの組織の大きな違いは

株式会社・・・不特定多数を対象に、株主の利益を目的に定款に定めた事業を遂行する。

協同組合・・・組合員を対象に、組合員の利益を目的に定款に定めた事業を遂行する。

という点にあります。更に細かく見ていくと

①組合は組合員の経済的利益が目的である(株式会社は不特定多数を対象に営利活動を通じて利益を上げ、株主に配当するのが目的)

②組合員は人を中心とした結合体である(株式会社は「資本」(≒金)を中心とする組織)

③組合の議決権・選挙権は出資の多寡にかかわらず1人1票(株式会社は所有する株式数に比例して増える)

④組合員が組合事業を利用した分量に応じて配当することができる(株式会社にはこのような規定はない)

⑤組合は4人以上の発起人、行政庁の認可により設立する(株式会社は1名以上の発起人で足り、行政庁の認可も不要)

などが大きな違いと言えるでしょう。

組合員になるには

皆さんがよくご存知の生協(CO-OP)、農協(JA)のほか、事業協同組合、商工組合、企業組合など様々な種類の組合があり、それぞれ加入資格が異なります。加入条件はそれぞれの組合で決められた「定款」に記載されています。通常は加入条件を満たした個人または中小企業が、出資金組合費(賦課金)を払い込んで正式に組合員としての地位を取得します。

これからの協同組合の役割について

近代資本主義社会は世界の産業の発展に絶大なる役割を果たしてきましたが、協同組合の歴史で触れたとおり、貧富の格差や労働条件の悪化など様々な矛盾や社会問題も生み出しました。これに対抗して共産主義社会が生まれましたが、人々の自由が失われ、産業も停滞して明らかに失敗に終わりました。しかしながら資本主義の矛盾が解決したわけではなく、世界の各地で経済・教育格差に伴う貧困状態が続いています。協同組合の理念である「扶け合いの精神」はある意味で「残酷な資本主義」を補完する役割を大いに期待されているものと思われます。国連が2009年の総会で、2012年国際協同組合年(International Year of Co-operatives)とすることを宣言しましたが、協同組合が国際社会にも期待されていることの証と言えるでしょう。その後、2015年の国連総会で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)の実現とあわせて協同組合が貧困削減、仕事の創出、社会的な統合に果たす役割はこれからますます注目されることになるでしょう。